Kodak Retina Model 119

 仕事が忙しく、欲求不満がたまり、さらに家族サービスで旅行に行く前日に、勢いでGETした戦前のレチナです。じつは、先日の中古カメラ市で見かけてから、黒塗り+ニッケルメッキの渋さにしびれていたのですが、たまたま安いものを見つけたので買ってみました。

 レチナには非常に多くのモデルがあり、その中でも戦前の、しかも黒塗り+ニッケルメッキのモデルは3つあります。その最後のモデルです。違いはフィルムカウンター付近の改良がメインです。このモデルの次からクロームメッキになり、さらに距離計つき、露出計つき、とバリエーションが増えていきます。

 このモデルのレンズはシュナイダーのクセナーか、コダックアナスチグマットエクターだったようで、いずれも50mmF3.5です。距離計は無く、シャッターは1-1/300までのコンパーか、1-1/500までのコンパーラピッドが使われたようで、私のGETしたものは、クセナー+コンパーです。もちろんコーティングはされていません。

 フィルム巻上げとシャッターは全く連動しておらず、気をつけないと多重露出を連発してしまいます。フィルム巻き上げも、巻き止めがあるだけで、次のコマに進むには、ノブを動かし、カウンターを進めると同時に巻き止めを解除する作業が必要です。B・Xはシャッターチャージ不要です。

いっしょにケースもついてきましたが、これはパリパリ状態で、破れた部分も多く、修復は非常に困難な状態でした。この頃のレチナにはストラップ取り付け場所が無いので、ケースはあったほうが便利なのですが。

まあ、手のひらサイズのコンパクトさなので、ポケットに入れたり、握ったまま歩いても全く苦にはなりません。

旅行に行った後、一応分解整備をしておきました。フィルム巻き止め・カウンターは単純な動作なのですが、仕組みは結構複雑です。ボルシーなどとは大違い。ファインダーはガラスまで分解できるので、非常に綺麗にできました。

実は、このファインダーの見え具合がまたすばらしいのです。

黒塗りが剥げた部分はそのままにするか悩んだのですが、こすれた部分はそのままにし、はがれた部分は塗ってみました。エッジの部分だけこすれて下地が見えているのはカッコいいと思うのですが、割れて剥がれている部分は個人的にあまり好きではないので。

整備の終わった状態です。この時代のレチナは縦置きが実にカッコいい。

後ろから見たところです。ファインダー接眼部のすぐ隣のレバーがカウンター進め+巻き止め解除のレバーで、その隣は巻き戻し用レバーです。

蓋を閉じると本当にコンパクト。ただし、蓋の設計がギリギリなので、無限遠にしないと閉じません。

同じ蛇腹のカメラとして、コンテッサを並べてみました。距離計・露出計がついているのと、レンズの口径が少し大きいので、断然サイズが大きくなってしまっています。レチナも2型・3型とどんどんサイズが大きくなってしまいます。

ニッケルメッキとクロームメッキの差が良く分かります。やはり黒塗りにはニッケルメッキが渋いです。

蓋を閉じた状態の厚みもかなり違います。

 レンズにコーティングもされていませんし、距離計も無いので実用性は低いかもしれませんが、コーティング無しのレンズでは戦前のコンタックス用テッサーで渋い写りでしたし、カラーでもOKでしたので、これも期待しています。距離計が無い点はローライ35同様、もちろん不便ですが、まあ、この渋いデザインと、コンパクトさも良いものです。


渋い・・・(OM4Ti+ズイコー50mmF2マクロ)

暇でしたので、ヘリコイドのグリースアップを兼ねて手入れでも・・・。

コンパーシャッターは簡単に前が外せます。

コンパーシャッターの様子です。戦前のものとは思えないほど全く腐食などありません。材質がいいのでしょう。
シャッター・レンズを下ろしたところです。ボディとの連動は全く無いのでシンプルです。
底には、深度計算用のダイアルがあります。精密な刻印です。
巻き上げノブ付近です。
整備を終えたところです。ヘリコイドは滑らかになりました。

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