コンピューター:師匠と弟子の会話:就職について
弟子:「師匠、ずいぶん長いことこのコーナーが更新されなかったじゃないですか。」
師匠:「うむ、ちょっと個人的にも仕事的にも忙しかったのだ。それにあまり続けて書いていると、傾向が同じになってしまうしな。」
弟子:「本当はネタが尽きただけじゃないですか?」
師匠:「まあ、そうとも言うが、良いのだ。このコーナーは私の気晴らしのために書いているのだからな。」
弟子:「こんなページ、誰も見ないですよ・・・と思ったら、いつのまにか、400カウントくらいはあるんですね!」
師匠:「世の中、暇なやつが多いのかな。」
弟子:「ところで、今回のテーマはだいぶ今までと傾向が違うじゃないですか。」
師匠:「そうなんだが、ちょうど私の会社で求人活動などもやっていたので、書きたくなってしまったのだ。」
弟子:「不景気で学生さんは就職も大変な時代ですよね。」
師匠:「そうだな。私の就職の頃はバブル真っ盛りで、どこの企業も恐ろしいほど求人していたし、ベンチャー企業もたくさんできていたから、就職なんて目を閉じていてもできたくらいだ。だがな、どんな試験でも、必ず1番になるやつは居るのだ。どれだけ就職の倍率が高くても自分が1番になれば絶対にその会社に就職できることは間違いないことなんだ。」
弟子:「どうすれば一番になれるんでしょう?」
師匠:「会社は採用するということはその人に投資する、ということと同じくらいの意味があって、要するに入社してからしばらくの間は自分の給料分も稼げない人に毎月給料を払い、それをだんだんに返してもらって、さらに会社の利益を生み出してもらうことを目的としているわけだ。だから、投資するに値する人が欲しいわけだな。ところが、最近の若者は・・・こんなことを言うと、じじい、と言われそうだが、どうも自分を売り込んでこないんだ。会社説明会でもおとなしく座っているだけで、質問は無いか?と尋ねても大抵黙っているか、あるいは、どうでも良いことを聞くくらいだし、面接でも大抵の人は自分をアピールできないのだ。それどころか、質問したことから大きく外れた返答をしてくる人も多い。理解力が無いのか・・・」
弟子:「そんなこと言っていいのですか?最近の若者はすぐ切れますから、刺されますよ。」
師匠:「そうだったな。あくまで、このページは私の憂さ晴らし、ということを忘れないで見て欲しいのだが・・・。」
弟子:「では、自分をどうやってアピールすると良いのですか?今の若い人はそんなことするのはカッコ悪いと思っていますよ、きっと。」
師匠:「カッコの良し悪しは、学生時代まででおしまいなのだ。社会人になったらあくまで、実力の社会。もっと極端に言うと、結果がすべてに勝るのだ。で、どうやってアピールするかだが、たとえばコンピューター系の開発を志望するのであれば、自分の一番こだわって作ったプログラムを説明してみるとか、あるいは、この職種につくために、自分で自分にどれだけ投資してきた、とか、堂々と語ってみれば良い。面接担当者だってその道のプロだから化けの皮はすぐに剥がれるし、まだまだ青いな、と言う風に感じることも多いが、少なくともただ黙っているやつよりは可能性を感じるものだ。」
弟子:「日本では古来、自分を主張することは避け、黙って結果を残していく、というのが美しい、という風習があるじゃないですか。」
師匠:「なにをいまさら昔の話をしているのだ、今の若者なんか言葉遣いすら公の場で恥ずかしいレベルのやつが多いのに。」
弟子:「またそういうことを・・・刺されますよ。」
師匠:「おっと、そうだった。気をつけよう。まあ、今の社会は会社側も昔のように年功序列ではなくなってきていて、実力主義になってきているからな。どれだけ力があっても表現できなかったら駄目な場合が多いんだ。少なくとも損をする場合が多いな。自分の仕事での力をアピールしないで仕事が取って来れるかい?何も行動をしないのに、お客さんのほうから良い仕事がやってくることなんてまず無い。この分野なら任せておけ、と自信を持って語り、そして他ではできないような結果を残していってはじめて評価されるんだ。」
弟子:「SEとプログラマー、のページでも話していましたね。要するに会社は仕事の初めから終わりまで安心して任せられるような人が欲しいのですね。」
師匠:「そうだ。だからただ単に成績が良いとか、技術がある、というのでも駄目で、かといって口先ばかり達者でも駄目で、自分の語っていることに責任を持ち、またそれに向かって着実に進んできている、という話ができるような人が良いわけだ。」
弟子:「なるほど。でも難しそうですね。ところで、就職説明会などでは、技術系の会社でも経験は問いません、というのが多いですが、本当ですか?」
師匠:「うーん、あまり答えたくない質問だな。まあ本音を言ってしまえば、もともと仕事に直結する技術を持っている人といない人がいたら、人間性が同じくらいであればどこの会社だって技術を持っている人を取るだろう。これはあたりまえのことだ。ただ、経験は問いません、というのは仮に現在、その方面の技術的経験が無くても、それ以上のすばらしい人間性やバイタリティーを感じれば、採用、という場合もある。就職を目指す人だって、今は技術経験が無いが、今すぐにでも勉強をはじめますよ、と自腹でコンピュータを買ったり開発ツールを買ったり、本を買ったりして、実際に本気で取り組むのだ、という姿勢を見せればいいのだ。志望者が「第一回の会社説明会を聞いて、貴社を目指すことを決め、PCと開発ツールを買い揃えて勉強をはじめました!」とか言ってくれたら、もうその場で「採用!」と言ってしまうかも知れないが、なかなかそういう人はいないのだ。」
弟子:「PCは安くなったとはいえ、そうそう簡単に買える物でもないですしねぇ。」
師匠:「そういう考えが如何のだ。長い人生を考えてみることが大切だ。今、ほんの少し無理してPCを買ったりしたお金と、それによって志望の会社に入り、自ら技術を磨いて稼いでいくことを比べてみて欲しい。だいたい、そういうときこそ親を頼ったりするときなのだ。就職してから毎月1万円ずつ返すから、という約束でもして自分に投資する姿を見たら親だって喜ぶはずだ。私も大学のとき、親から半額援助(借りたのだっけかな?)を受けてPCを揃えたのだ。当時はPC本体で40万円近くもしたのだ。でもあの時、親は将来、きっと何かに役立つはずだ、と快く援助してくれたし、そのおかげで今の私があるのだ。」
弟子:「いまだとPCは8万円も出せば普通に使えるものが揃いますものね。8回飲みに行くのを我慢すれば良いんですよね。」
師匠:「まあ、あまりけちけちしていると友人がいなくなるから、ほどほどに。それにカードなどで無理して借金したりしても駄目だぞ。とにかく、まずは親に相談してみるのが良いと思うな。あるいは、バイトしたりしたって8万円くらいすぐ貯まるだろう。とにかく、自分に投資して、本気ですよ、と言うところをアピールするのは相当効果があると思うな。」
弟子:「でもあんまりアピールばかりしてしまうと、内定してからとか、入社してから大変そうですね。」
師匠:「こちらはそれが狙いでもあるのだ。私なんか、代々の部下の入社時の履歴書はいつでも出せるところにしまってあるし、弱音を吐いたら、君はあの時たしかこう言っていたよね、と釘を刺せるからね。」
弟子:「うわー、怖い・・・」
師匠:「まあ、就職というのは学生の頃と違って、お金を稼がないといけない立場になるわけで、自分の言ったことの責任ももてないようでは仕事を任せることなんかできないからね。だから本気で取り組んで欲しいのだ。それに普通の人は社会に一度出たら後戻りはできないのだ。長年自分のキャリアを積み重ねていかないと、やがて家庭を持ったり、子供を育てたりするだけの稼ぎが得られないのだ。いいかげんな気持ちではなかなか勤まらないものだ。社会に出て、親元を離れて、自分ひとりで生活してみると親のありがたみと偉大さが身にしみるものなのだ。学費を出してもらいながら、小遣いが少ないとか生意気な口をたたいていた自分が恥ずかしくなる。そして、そういうことがわかった頃に、就職活動をしている学生を見たりするときっと、まだまだ甘いな、という感想を持つことだろう。」
弟子:「人生は厳しいですねぇ。ところで、師匠は転職についてはどう思いますか?」
師匠:「最近は一つの会社に一生勤めるのではなく、どんどん自分を高く買ってくれる会社に移っていく人も多いらしいな。まあ、それはそれでいいことだと思う。ただ、自分を高く買ってくれる、と言うのが重要だ。中途採用をする側の立場になって考えてみて欲しい。新卒で採用するのに比べ、給料なども高い金を出してでも来て欲しい、というのは、その人のこれまでの実績を評価してのことだ。したがって、気に入らない会社に入ってだらだら仕事をしていて、嫌になったから他に行く、という考えでは転職してより良い条件になることなんかまずありえない。だから新卒時の就職を本気で考えて欲しいのだ。将来転職するにしても、自分を高めて、自信を持って売り込みにいけるだけの力をつけられるような仕事につかないとお話にならないのだ。そういう意味で、就職活動をしている多くの学生が「どこかには入れれば良いや」といいかげんな気持ちで訪問してくるのを見ると、本当に心配になってしまうのだ。」
弟子:「良い会社・良い上司に恵まれるのが、いい人生の第一歩なのですね。」
師匠:「まあ、あまり会社に多くを期待してもいけないし、もちろん良い上司の下に配属されることだって難しいかもしれない。あまり他力本願になってもしょうがない。本当はまわりをすべて敵に回してでも自分の主張を通して、それをやり遂げていくくらいの骨のある人が会社としては長い目で見ていいかもしれない。まあ、いずれにしても、自分の主張ができるような会社を最低選ぶべきだな。」
弟子:「会社の規模はどうですか?」
師匠:「会社の規模によって仕事の範囲はかなり大きく異なってくることは確かだ。もちろん規模の大きい会社のほうがそもそも金があるから、やりたいことをできるかもしれないが、その分優秀なやつもたくさんいるはずだ。それに一人で叫んでいてもなかなか会社は動かないだろう。小さな会社はその点自分の動きがすぐに会社の動きに反映されるのでやりがいはあるかもしれない。ただし、金の蓄えは少ないだろうから、まずは稼ぐことが何よりも先決となるだろう。大きな会社は自分を生かせない、という場合もあるが、会社によるのだ。S社なんか個人の能力を非常に活用するし、そのために面接時に白板を使っての説明などまでさせられるらしい。M社は創始者の教えに従い、物を作る前に人を作れ、という教育をしているそうだし、それぞれ会社ごとにカラーがあるのだ。よく考えて選ぶのが良いだろう。究極を言えば自分で事業を起こしたって良いのだ。もっとも卒業していきなりだとよほど資本の要らない事業に限定されてしまうだろうが、まさに自分で自分の道を切り開けるのだ。いずれにしてもたった一度の人生、節目節目では少なくともしっかり考えて道を選んでいくことが大切だ。」
弟子:「今回もずいぶん説教くさい話になりましたね。」
師匠:「説教はオヤジの専売特許みたいなもんだからな。まあ、たまたまここまでがんばって読んだ人には少なくとも人生の社会への第一歩をいい形で踏み出して欲しいな。」