コンピューター:師匠と弟子の会話:SEとプログラマー
弟子:「師匠、いつものC言語講座がちっとも更新されないと思っていたら何で突然こんなコーナーができたんですか?」
師匠:「C言語講座は最近ネタがなくなってしまい、カメラのページばかり更新していたんだが、さすがに本職のコンピューターのページをほったらかしにしておくこともできないじゃない。C言語講座は俺の数あるページの中でもアクセス数上位を占めるのに、来るメールは課題を解いて、とかがっかりするようなものばかりで、こんな話題を取り上げて、という感じのメールは一通も来ていないのだ。しょうがないからそういう不満を含めて本音で言いたいことを言ってみようかと、こういうページにしてみたのだ。」
弟子:「確かに学生さんは課題を解くのが本業のくせに、答えを簡単にGETする方法ばかり考えて、肝心のコンピューターの勉強はちっともしない人が多いですからね。」
師匠:「そういうやつに限って変なところに知恵が働くから、WEBで検索などして、解いてくれそうな人を見つけたりするのはうまかったりするんだ。だいたい、学校の授業も悪いんだ。理解させようという授業ではなく、カリキュラムをこなす授業をして、それに沿った課題をいきなり短い期限で学生に出すから解けないやつが続出して、結局大勢で寄って集って答えだけを探すんだ。」
弟子:「でも、授業が良い悪い以前に、学生は授業を聞いていないし、出席すらしていないやつが多いですからね。」
師匠:「まあ、俺も学生の頃は出席を取ったら抜け出していたからな・・・。いろいろと勝手なことをできるのも学生の特権だしな。ただ、いろいろなことをやりながら自分に一番向いた進路を考えることも大事なんだよな。俺は工業化学を専攻していたがアルバイトでプログラミングをやって、今の職についたわけだし。いずれにしても遊ぶならとことん自分で責任を取って遊んでほしいな。それができないやつはまじめに先生の言う通りにするべきだ。」
弟子:「なんかすっかり学校や学生を敵に回すような発言ばかりしていますね。」
師匠:「いいんだ、このページだけは一切苦情などのメールは受け付けないことに決めたし。でも俺の親父は先生だったし、親戚にも先生がたくさんいたから先生の苦労もちゃんとわかってはいるんだけどね。最近の学校が荒れているのは先生や学校の問題も多少はあるだろうけど、親の問題だね。最近の親は子供を叱ったりしないからな。叱って泣き喚いたりしてうるさいのがいやで、子供のご機嫌ばかり伺っているんだ。あれじゃわがまま放題になって、いきなり学校でそれを直そうとしたって、すでに手遅れだな。」
弟子:「このページは教育問題のページでしたっけ・・・」
師匠:「おっと、脱線しすぎた。俺も自分の子供を育てていて、近所やファミレスなどで同じ年代の子供を見ていてかなり頭に来ることが多くて、欲求不満になっていたからな。まあちょっとは言いたいことを言ってすっきりしたから、本題に戻ろう。何を話そうとしていたか忘れたな・・・」
弟子:「師匠の話は長くて説教くさくて、疲れるという評判ですが・・・」
師匠:「おお、思い出した。要するに、俺のやっている仕事で、どんな人間が欲しいかを話すことで、学生さんたちや、先生方が何を教わり、教えるべきなのかの参考にして欲しいと思ったんだった。」
弟子:「先生にまで説教できるほどの域に師匠は達しているのですか?」
師匠:「そんなことはどうでもいいんだ。ただ、言いたいことは黙っているより言ったほうが誰かのためになるかもしれないからな。誰のためにもならなくたって俺が欲求不満を解消できればいいのだ。」
弟子:「勝手なこと言ってますね。まあ師匠の作っているページですから師匠の勝手ですよね。ところで、なかなか本題にたどり着きませんが・・・」
師匠:「そうだった。俺の仕事はコンピューター系の開発なのだが、どうやらこの業種にはSEとプログラマーという2つの職種があるらしい。業種とか職種という言葉が正しいかはわからんがな。SEとはシステムエンジニアの略らしいのだが、いったいそれぞれがどんな仕事かわかるか?」
弟子:「SEはシステムの設計・提案などを行って、プログラマーはプログラムを実際に作る仕事なんじゃないですか?」
師匠:「そんなことらしいな。俺も実はよくわからないんだが。で、SEとプログラマーはどっちが偉いんだ?」
弟子:「プログラマーはSEが作った仕様をもとにプログラムを作るから、SEの方が偉いんじゃないですか?」
師匠:「俺もそう思っていたんだが・・・。では、おまえはどっちになりたいんだ?」
弟子:「そりゃ、偉いほうが良いからSEですよ。プログラマーは言いなりになっているだけですからね。」
師匠:「そう考えているやつが多いんだ。じゃあ、SEになるにはどうすればいいんだ?」
弟子:「フローチャートとか、システム設計の技法を勉強すればいいんじゃないですか?」
師匠:「そういうSEが多いから困るんだ。教習所の教官になるにはどうすればいいかな?」
弟子:「ずいぶん話が飛びますね。教習方法を勉強すればいいんじゃないですか?」
師匠:「ちがうだろ、まずは自分が運転ができて、道路交通法をわかっていて、それから教え方を勉強しないとだめじゃないか。コンピューターの仕事でも同じなんだ。システム設計をするやつがプログラミングを知らないで設計することができると思うか?」
弟子:「そりゃ、確かにプログラムのことを全く知らなければ設計できませんが、いまどき学校でだって多少はプログラミングの授業があるじゃないですか。ちょっとわかっていれば細かいことはプログラマーに任せて設計すればいいじゃないですか。」
師匠:「そういうやつが設計したものをプログラムにするのが一番大変なんだ。コンピューター業界ではどういうわけだか、SEが工程まで決める場合が多いんだ。プログラミングをわからずに設計し、工程まで決めた状態で、プログラマーに仕事が来てみろ、そりゃつじつまあわせが大変なことになるんだ。つじつまあわせが大変になるとプログラマーはどうすると思う?肝心のプログラミングの品質や性能より納期に間に合わせることに必死になるんだ。で、結局納期どおりに何とか出来上がってきたプログラムは仕様書に書いてあることだけ何とか対応したような、実に危ないプログラムになるんだ。」
弟子:「そりゃ、仕事を受ける側としては納期に間に合わないとお金がもらえませんからね。でもそこまでひどい状態なんてそんなにあるんですか?」
師匠:「困ったことに、結構そういうことが多いんだよな、大きな声じゃ言えないが。で、実際に運用して問題が発覚するとことごとくプログラマーのせいにするんだ。」
弟子:「プログラマーって損な役割なんですね。やっぱりSEになったほうがいいな。」
師匠:「そういう考えのやつが一番SEになってほしくないんだがな。まあそうやってSEとプログラマーを明確に分けて仕事すること自体が俺としては一番良くないと思うんだ。理想を言えば、システム設計をするやつは、プログラミングやコンピューター全般の深い知識・経験があり、設計能力があり、管理能力があり、もうひとつ重要な能力が欲しいんだ。」
弟子:「それだけ能力があれば十分じゃないですか。」
師匠:「一番大事なのが抜けているんだな。コミュニケーション能力が大事なんだ。なにしろ、お客さんとしっかり会話ができなくては要求もわからんし、こちらからの提案もできないからな。」
弟子:「いくらなんでも話ができないやつなんかそうそういないじゃないですか?」
師匠:「無駄話ならいくらでもできるんだが、肝心なところでしっかり話ができないやつが多いし、そもそも相手が要求していることを理解できないやつが意外と多いんだ。」
弟子:「じゃあ、コンピューター系の仕事に就きたければまずはコミュニケーション力を勉強すればいいのですね。」
師匠:「そうなんだが、学校でそんなことを教えてくれるかい?」
弟子:「そういえば大学の授業でもそういう講座はありませんでしたね。」
師匠:「そうだろ。そういうことは本来は幼稚園・小学校・中学校あたりまでで教育されている、と考えているんだろうな。でも実際社会に出て仕事をしてみると全くだめな場合が多いんだな。海外の教育がどうなっているかは知らないが、日本の教育はなんか公式や文法ばかり詰め込んで、実践力が伴わない気がするな。その根本は個人より集団を重んじた考え方にあると思うんだ。確かに個人個人が全く勝手なことをしていてもしょうがないが、集団という名目のもとに逃げている面が多いと思うんだ。集団ばかり考えていると一番欠落するのが責任感だと思うんだ。みんなでやるから、と自分の考えを言わず、そのかわり責任も取らない、という人間になってしまうんだな。そのほうが楽だしな。で、社会に出ていきなり金が絡んで責任を取らなくてはいけなくなったときに一人で何もできない状態になってしまうんだ。」
弟子:「師匠らしい説教話がはじまりましたね。」
師匠:「まあ、幸いなことに学校教育と違って社会では長い年月の時間があるからそれからでもなんとか失敗を繰り返しながら一人前になれるんだがな。いずれにしてもコンピューター系の仕事に就きたければまずはコミュニケーション力、理解力、自己表現力などを養っておくことだ。」
弟子:「説教の内容は良くわかりました。で、やっぱりプログラマーよりSEになったほうがいいんですよね?」
師匠:「それが俺はそうは思わないんだな。プログラマーはただ仕様どおりに作れば良い、というと責任逃れでいいかげんな仕事をするし、SEもさっき言ったようにプログラミングを知らないでいいかげんな設計をしては困るし、結局区別しないほうがいいと思うんだ。もちろん一人きりで設計もプログラミングもやっていたらとても世の中の進歩に追いつけるような仕事はできないが、一人一人がプログラミングも設計もわかっていて欲しいんだ。」
弟子:「師匠がそう思っていたって世の中は変わらないじゃないですか。」
師匠:「まったくそのとおりなんだが、せめてこのだらだら長い話をまじめに読んでくれるような人には、プログラマーであればSEの範囲まで、SEであればプログラマーの範囲までしっかり考えて勉強・仕事をして欲しいな。」
弟子:「では、これからはプログラマーやSEという感じで目指していくのではなく、コンピューター技術者として一人前になれるように私もがんばりますね。」
師匠:「良い心がけなんだが、まだそれでも甘いんだ。」
弟子:「いつもどおり、屁理屈でもはじまるんですか?」
師匠:「屁理屈は好きだが、今回はまじめな話だ。そもそも俺が学生諸君が就職活動とかで来るときに一番気に入らないのが、技術職を希望します、という主張なんだ。不思議なことにうちの会社に来る学生のほぼ10割そういうんだな。何で技術職を目指すと思う?」
弟子:「やっぱり手に職つけたいし、営業って言うと、外回りとかノルマとか大変そうだからじゃないですか?」
師匠:「管理職も同じように嫌われるんだ。」
弟子:「中間管理職とか体を壊す人も多いらしいですしね。」
師匠:「皆そう思うらしいんだな。でも良く考えてみろ、会社の社員がすべて技術職だったら成り立つか?いったい誰が仕事を取って来るんだ?会社はお金を稼がないと潰れるからな。かといって優秀な技術者がそろっているからって黙っていても仕事がやってくるほど世の中甘くないし、黙っていても仕事が来るほどのすばらしい技術がおまえにあるのか?」
弟子:「そりゃ無理ですけど・・・」
師匠:「それに優秀な技術者がたくさんいたって誰も全体を管理しなければ仕事にならんだろ。だから、仕事として考えるんであれば絶対に最後は営業能力や管理能力を身につけることを考えるのが大事なんだ。もっとも技術系の仕事を取ろうと思ったらそれこそ技術者なみかそれ以上の知識・経験がないと仕事は取れないし、技術者を管理するには技術もわかっていないと無理だから、まずは技術者として一人前になって、それから仕事を取れるように、管理できるようになることだな。」
弟子:「で、仕事を取れるようになるにはどうすれば良いんですか?」
師匠:「実はそれが難しいんだ。俺もまだ仕事をバシバシ取れないからな。まあ、人脈と運と実績は少なくとも大事だと思っている。実績は一つ一つの仕事をしっかりこなして積んでいけるし、運は誰にでもあるもので、ただ、それをつかめるかどうかなんだな。人脈はやはりコミュニケーション能力と、自分がどれだけ相手に何かを与えられるかが勝負だな。相手だって付き合って何の得にもならないならないやつとは付き合わないからな。」
弟子:「結局いろいろ考えて必ず出てくるのはコミュニケーション力ですね。」
師匠:「そりゃそうだ。人と人との間に仕事が生まれるからな。長くなったからこの辺でやめるが、要するにプログラマーとかSEとか、小さい目標を人生目標にするんじゃなく、自分で仕事を組み立てられる一人前の社会人を目指すのが大事だ、と言いたかったわけだ。コンピュータだけ知っていれば良いってもんじゃない。一般常識や世の中のこと、さらには人を豊かにする芸術など、いろいろなことを幅広く身につけ、礼儀をわきまえた、どんな相手とでも会話が楽しめるような人間になることだな。個々の技術や云々はそういう人格があってこそ意味があるものだからな。だから勉強ばかりでもだめだし、いろいろな人と付き合い、遊び、無駄遣いもして趣味もたしなみ、薀蓄の一つや二つ語れるような人間になりなさい。そして、自分をしっかり持つことだ。俺にこういわれたからってすぐに変わるようじゃだめだ。」
弟子:「要するに、今回の話は、師匠個人の意見に過ぎない、ということですね。」
師匠:「そうだ。でもいろんな人の意見を聞いておくのはいいことだぞ。それぞれの意見を自分なりに解釈して、自分なりの考えを組み立てていくことだ。だいぶテーマからはそれた感じだが、このページは言いたいことを一方的に言って、反論・苦情は受け付けないページだから良いのだ。」