ALPA REFREX 6c
マクロスイターの描写が気に入り、他のボディーで近接撮影だけを楽しんできたのですが、やっぱり無限遠を撮りたくなった(あたりまえですね)ので、家計から前借りしてボディを購入しました。ALPAは初期タイプのマウントだけは違うのですが、それ以降であれば同じマウントなのでどのボディでも良かったのですが、個人的にはアルネアタイプのボディ形状が魅力的で、アルネアモデルかbモデルが欲しかったのですが、良く考えると、45度ファインダーでは縦位置が撮りにいかな、と思い、子供や花の撮影ではやっぱりアイレベルが良いかと思ったのと、たまたま6cのボディのみを見つけてしまったので、これになりました。はじめはc型以降の形はいまいちすきではなかったのですが、雑誌などで見慣れるとなんとなく良く見えてくるのはいつものことです。
いつものようにオークションでGETしても良いかと思ったのですが、ALPAはオークションでも高くなりますし、壊れると修理できるところも少ないらしいので、オーバーホール販売してくれるレチナハウスで購入しました。オーバーホール済みで、ファインダースクリーンなどが新品に交換されているようです。6c前期なので私より年上です。6cは3500台程度しか作られませんでしたが、それでもALPAとしては多い方です。
ALPAはb型以降、巻き上げにレバーがついたのですが、向こうから手前に巻く、独特のもので、あまり使いやすくは無い気がします。b型以前のレバー無しでダイアルを回す方式でもあまり変わらない気が・・・。シャッターはエキザクタ同様ボディ前面にありますが、右手を使います。c型ではセレンを使った単独露出計がついていますが、感度低下で使えません。おそらく中の抵抗・配線が劣化しているのでしょう。そのうち修理にチャレンジするかもしれません。
ファインダー関連は確かにスクリーンなどはピカピカですばらしいのですが、プリズムのファインダースクリーン側にかなり傷があり、目の焦点をそちらに合わせると気になります。まあ写真には写らないですし、スクリーンが奇麗な方がピントは合わせやすいので気にしないようにしようと思いますが・・・。スクリーンにはスプリットイメージがついていて、マット面もなかなか明るく見やすいです。
シャッターも試写結果から全く問題ない感じで、スムーズです。シャッター速度は巻き上げレバーの下のダイアルで合わせるのですが、不等間隔で押し込んで合わせ、1/15より長いシャッター速度はそこでネジを巻く感じになります。ほとんどの場所で中間速度も使用できます。フィルムカウンターもちゃんと動いています。前期型はボタンを押してリセットするタイプで、後期型は自動リセットになっています。
これが1眼レフ最短の(初期タイプの方が短いですが)フランジバックを誇るALPAのマウント部分です。マウント部分が非常に薄くできていますし、レンズ側も薄い鋼板をネジ止めしてあります。口径は意外と大きく、これなら確かにいろいろなマウントをアダプターで使えそうです。ただ、ミラーはやっぱりどう見ても短く、50mmレンズでもファインダーからスクリーンを見ると、ミラー切れがかなりあります。
このフランジバックの短さのおかげでマクロスイターはM42マウントのもの(82本しか作られなかった!)以外は他のカメラで使えないのです(大改造すればで可能ですけど)。
ALPAのフランジバックは37.8mmで、ニコンは46.5mmと8.7mmも違うのです。ニコン用のマウントアダプターがコンバージョンレンズ無しでほとんど存在しないのはこの為です。なお、他にフランジバックが短いのは、コニカARの40.7mm、ミランダの41.5mm、キャノンFDの42mm、ミノルタMDの43.5mmなどで、それでもALPAに比べるとだいぶ長いのです。キャノンFDマウントはキャノン自身がエキザクタマウントアダプターをかつて販売していたくらいですし、コニカ・ミランダ・ミノルタも純正のマウントアダプターが存在していました。現在、もっともマウントアダプターを作りやすいのは実はキャノンEFマウントで、フランジバックが44mmと意外と短く、圧倒的な大口径なのです。が、キャノンEFマウント、要するにEOSのボディはプラスチックで旧いレンズなどには似合いませんし・・・。なお、エキザクタは44.7mm、M42は45.46mmと意外と長いので、他のボディにそれらのレンズを装着するのは意外と容易なのです。なお、35mm版一眼レフで一番長いのはライカRの47mmかな?
早速、エキザクタマウントアダプターを自作してみました。これはアダプターのページに掲載します。なお、手持ちのレンズでいろいろチェックしてみた感じでは、キャノンFDマウントのアダプターは無理そうです。FDレンズはフランジバック的にはもちろんOKなのですが、マウント内部に収まる部分の径が大きいので、ALPAマウントに入らないのです。M42・ニコン・ペンタックスなどはがんばれば作れそうです。もともとM42・エキザクタ・ニコン・コンタックス・ライカRなどはALPA純正のマウントアダプターがあるのですが、見つけるのが大変ですし、値段もレンズと同じくらいで高い!自動絞り対応のものもあり、これは自作できそうも無いので、欲しいところですが・・・。
・・・オーバーホール済みのしかも高価なALPAですから分解はしないかと思えば・・・やっぱり分解してしまいました。とりあえず軍艦部を開けて、プリズムの傷を見たかったのと、ちょっとした埃を取りたかったのと・・・もちろん開けてみたかったのです!
軍艦部をはずすにはまず巻き上げレバーをはずします。これはセンターのネジ(逆ネジだったかな?)をはずし、そのまま持ち上げれば取れますが、その際に巻きバネが一気に緩むのでびっくりしますが、これは簡単に後で直せます。なお、3本のビスで留まっている蓋を外すと巻きバネが露出しますが、これは戻すときまでそのままにしておいた方が良いでしょう。はまっているだけなので簡単に外れてピーンとまっすぐに伸び切ってしまうと巻くのが結構大変です(アドバイスしたって分解する人いないでしょうけど・・・)。
この状態でb型以前のレバー無しと同じ感じになります。ダイアルを回して巻き上げてみたりしても、やっぱりあまりレバーの有無は使い勝手に影響無い気もします。さて、ダイアルをはずすには、2個の小さなネジをまずゆるめます。それからセンター部の銀色の部分をゆるめるのですが・・・これが硬い。逆ネジではなかったと思います。穴が2つ開いているのでカニ目で開けるのかもしれませんが、カニ目が壊れそうです。私はラジオペンチを使ってレバーとの連動部分を使って回しました。これをはずせばシャッター指標・ダイアルが取れます。この時に大体角度・向きなどを覚えておきましょう(ってやる人いないでしょうけど)。
今度は巻き取り側をはずしますが、これは裏ブタを開けて、リングをはずせば簡単に抜けます。これで軍艦部をはずす準備はOKです。軍艦部はボディとネジ3本で固定されていて、フィルムパトローネが入るところの1本と巻き上げスプール下に2本ネジがあり、これをはずします。巻き上げスプールははずしてからネジを外しましょう。この固定方法はボルシーとおんなじです。ALPAの原形はボルスキー氏で、ボルシーの設計者と同じなので、こういう止め方が好きなんでしょう。これで軍艦部は簡単に外れます。プリズムやファインダースクリーン上のコンデンサーレンズなどがこれで掃除できます。ファインダースクリーンの位置もネジで調整できる仕組みみたいですが、合っていそうなのでいじらないでおきました。露出計もいじれるのですが、見た感じ、2つの抵抗・配線がかなり劣化していそうです。そのうち対策を考えてみたいところです。
プリズムの傷はかなり目立ち(写真でもわかりますね・・・)、これは研磨でもしないと取れなそうです。ガラス研磨剤などをドイトで買ってきて他のガラスで実験してみましたが、かなり大変・・・。ジャンク品でも見つけて交換するのが良さそうですが、ALPAのジャンクなんて高そうです・・・。
さて、埃などを吹き飛ばしたら元に戻すのですが、問題はシャッター指標です。なんとネジでそれらしい位置に固定されているだけなので、組み立てるときにはどこで合わせるかが問題になります。何回かやってみて、一番確実なのは、B,1/30,1/15がきちんと動くポイントを確認することみたいです。1秒もほぼ一番端っこで合わせれば良さそうですが、1/1000側はそれを超えても回るので基準には使えません。大体1秒で合わせて、それからBでスローガバナーを巻き上げない位置、1/30がバルブにならない位置、1/15がちゃんと切れる位置と考えるとちゃんと1個所に合います。その後、硬かった固定部品を締め付けるとまたちょっとずれやすいので気を付けましょう。なお、その部品の2本のピンの位置によって巻き上げレバーの固定角度が決まります。
巻き上げレバーを付ける際にはまず3本のネジを外して巻きバネ+蓋を外しておきます。ビーンと伸びてしまわないように気を付けます。まあ伸びても手で巻き取れば戻せましたが、結構面倒です。それから、シャッターダイアルの上にレバーを載せ、2本のピンの位置を締め具合で調整します。あまりピッタリペンタ部に合わせるとシャッターを切った際にぶつかって速度に影響が出るので、ちょっと余裕を持たせます。位置が決まったら、巻きバネ+蓋をバネの先端を中央の切り込みに引っかけて被せ、2回転くらい巻いてから、逆ネジで固定しましょう。レバーを動かしてちゃんと戻るか確認します。
あとは巻き取り部を戻せばOKです。軍艦部に機能の少ないキャノネットなどに比べると面倒ですが、特殊工具などはいらないので、M3よりは手軽に分解できそうです。ただ、ALPAは高いし貴重なので、覚悟を決めてから慎重にやりましょう。なにしろ多い方の6cでも3500台ちょっとしか製造されていませんから。
さらに・・・目の悪い私としてはやっぱり視度補正をしたくなったのですが、ALPAの視度補正レンズなんか探すのは相当難しそうですし、まして6c用の視度補正なんかあるのやら・・・。ということで、いつものように手持ちのほかのカメラの視度補正レンズを合わせてみました。手持ちで一番近いサイズのものはニコンFE2,FM2用のものでした。が、元々の部品を加工しないとはまりません。せっかくのオリジナルを加工して使えなくするのは厭だったので、金属加工の勉強になるかと、自作してみました。6cではネジ2本で軍艦部に固定されていますので、その部品と同じようなサイズ・形状で、ニコンの視度補正が入るようにすれば良いのです。
ドイトで材料を見たのですが、本物は真鍮板約0.8mmなのですが、錆びるのと加工が面倒そうなので、軟弱にアルミ版0.7mmを使いました。これなら柔らかく、錆もありません。金属用のはさみで大体切りとって、センターに穴を開けるだけだから簡単だろうと思ったのですが・・・。18mmくらいの穴を開けるのって実は面倒なんです。10mmくらいまではドリルの歯も安く売っていますが、18mmくらいだと高い。25mm以上位だと調整可能なカッターも使えるのですが、18mmワンサイズのために高い歯を買うのは・・・。と、手持ちの15mmを使って開けて、後はやすりで削りました(結構大変)。紙やすりで整えて、ネジの穴を開ければ完成。ただ、ニコンの視度補正はねじ込みで、ネジを切るのは大変なので、接着してしまいます。FE2では-4を使っているのですが、ALPA6cはもう少し度が強い方が良さそうなので-5にしました。しかしニコンの視度補正は安い。ライカの1/10です・・・。まあそれでもライカはいまでも新品で買えるのでありがたいですけど。
さて、ALPA6cの使用感を書いてみようかと思います。なかなかALPAを使ってみた上での感想とかは見つからず、値段も高く使いにくそうなのでALPAを避けて考える人が多い気がします(私もそうでした)ので。
エキザクタを何でもなく使えれば、それよりはだいぶ使いやすい気がします(比較対象が悪いですねぇ・・・)。巻き上げレバーが逆といっても、エキザクタみたいに左にあるよりは違和感無いですし、ダイアルだけで巻き上げるよりは楽です。ただ、シャッター速度を合わせるのがレバーの下にあるので使いにくいです。
シャッターボタンの位置はやっぱり使いにくいです。かえってエキザクタの左側の方が安定する感じがします。左手でレンズのフォーカスリングを持っていて、右手であの位置のシャッターボタンを押すのは非常に不安定です。トプコンもあの位置ですが、同じ感じなのかなぁ。シャッターダイアルと巻き上げレバーがシャッターを切るときに回転するので(レバーはちょっとですが)それを妨害しないようにホールドしないと駄目なのも気を使います。
シャッター音はOHしてあるおかげか、意外と高級感のある感じです。横走りの一般的な音だと思います。エキザクタは派手にバシャ!といってファインダーが真っ暗になる(クイックリターンでないので)ので、妻に撮ってもらったときには唖然とされましたが。面白いのはクイックリターンミラーで、シャッターボタンをゆっくりと押していくと、まずミラーがアップし、それからシャッターが切れるので、わざとやっているときには良いのですが、まじめに撮影しているときにこの現象が起きると、シャッター速度が狂ったのかとびっくりします。
フィルム装着も問題ないですし、ファインダーもオーバーホールでスクリーンを変えてくれたおかげでクリアーで、ただプリズムの傷が気になりますが、視度補正の効果もあって全体としてエキザクタよりは見やすいです。ただ、ミラーが短いようで、50mmでもかなりかげりが出ますが。アルネア型後期以降は倍数系列シャッターなので単体露出計も使いやすいです。マクロスイターのフォーカスリングの回しにくさはひどいですが、全体的には十分実用機として使えると思います。
最大の問題は値段だと思います。もっともALPAの新品当時の価格はライカ以上だったそうなので、それを考えれば安いのでしょうけど。ボディで12万円以上、スイターが8万以上、マクロスイターが10万以上という値段が近寄りがたいところです。が、冷静に考えるとライカMだってボディ12万円以上、ズミクロンが10万円程度、と同じレベルですね。ただ、ライカに比べ情報が少なく、修理などがどの程度できるのかなど、不安な点も多いのが手を出しにくくしているのでしょう。もともと生産台数の非常に少ないものなのでしょうがないですね。そう考えるとエキザクタなどは作りの割に安価で、しかもたくさん出回っていますし、レンズも豊富で安価。手を出しやすいですよね。
さて、肝心のマクロスイターの描写なのですが・・・。初めは無限遠がずれていて遠景は全く駄目でした。レチナハウスでまともなレンズをお借りして比較し、単純にレンズ自身のフォーカスが無限遠までまわらないだけ、とわかり、修正してようやくちゃんと写りました。この辺の内容はレンズ比較5のページに詳しく書いています。
傾向としては絞り開放ではやっぱりちょっとあまい感じもしますが、F4くらいまで絞るとすごい細かさで写るみたいです。コントラストは低く、パステルカラーっぽい色が面白いです。逆光にはそれほど極端には弱くないみたいですが、フードは欲しいです。クセノンに比べると夜景などで周辺の収差は少ない感じで点光源の流れは気になりません。マクロは絞ればピシッとしますし、開放でのとろけるような感じもたまりません。1m程度の距離で後ボケの2線ボケがうるさく感じますが、万能なレンズなんて無いですから(だからレンズがどんどん増えちゃうんですよねぇ)。せっかく苦労して手に入れたボディ・レンズなので、意地でも使いこなそうと思っています。
エキザクタマウントアダプターを自作し、手持ちのエキザクタレンズはすべてALPAでも使えます。年代があっているのでデザイン的にもマッチします。
ENNAのソッケルマウントレンズシステムをGETしました。ALPAマウントのほかにM42マウントもついていたので(というか、M42が3つで、ALPAは1つだったのですが)、手持ちのいろいろなカメラと組み合わせられます。レンズの描写もなかなか素敵です。
だいぶいろいろな作品をALPAで撮ってきましたが、最近、やっぱりファインダースクリーンの水平度が気になり、再調整しました。もちろん自分で。ALPAのファインダーは3つのネジで調整ができるのですが、おかげで難しいのです。MX+方眼スクリーン+50mmレンズをコリメーター代わりに水平性を出し、最後は遠景にピントを合わせ、調整しました。結構大変です。露出計も実は何回かチャレンジしたのですが、やはりセレン・あるいはその付近の配線あたりが劣化しているのか、駄目でした。ALPA6cの露出計は調整個所がほとんど無いのです。固定の抵抗が2つあるくらいで、後はただつながっているだけなんです。メーター自体も多少分解して見ましたが、やはり調整個所は見当たりません。CDSなどの電池式ですと、可変抵抗などを調整すればある程度はごまかせるのに残念です。まあ、もともとTTLでも無いのでアバウトな結果しか測定できませんが。
こうなると、マクロスイターのために、TTL露出計のついた、しかもシャッターダイアルの回転しない後期型の10d〜11Siあたりが欲しい気もしますが、3万円でGETしたマクロスイターのために馬鹿高いALPAボディを何台も買うのも・・・。